永井産婦人科病院
【Q&A集】
婦人科のQ&A@

【Q603】子宮動脈塞栓術とは、どのような治療法ですか?
【A603】子宮動脈塞栓術(UAE)は、過多月経や貧血、月経痛、腫瘤による圧迫症状などの症状を伴った子宮筋腫や子宮腺筋症に対して行う、子宮全摘術や子宮筋腫核出術などに変わる新しい治療法です。経皮的に動脈内に挿入したカテーテルを通じて、子宮筋腫や子宮腺筋症の病巣に栄養や酸素を送る子宮動脈を特殊な物質で塞栓することによって、病巣を梗塞して病巣の発育を抑え縮小させる治療法です。
子宮動脈塞栓術は血管造影の技術を用いて血管内治療をする放射線科医により1991年フランスで始まった新しい治療法で、アメリカでは現在年間1000例以上の子宮動脈塞栓術が施行されています。一方、日本では、子宮動脈塞栓術の実施施設はまだ限られていますが、当院でも市内の山近記念総合病院の協力により実施しております。
実施方法は右鼠径部より右大腿動脈を穿刺し、2mm程度のカテーテルを動脈内に挿入し、まず左内腸骨動脈より左子宮動脈の上下行枝分岐までカテーテルを進めます。ここで子宮動脈造影を施行し、造影剤と共に塞栓物質をX線遠視を見ながら子宮動脈内に造影剤が停滞するまで注入します。次に右子宮動脈内にカテーテルを進め、同様の動脈造影後、塞栓物質を右子宮動脈に注入します。全行程の所要時間は30〜60分位です。
本法は侵襲が少ないため術後翌日から歩行が可能で3〜5日後に退院できます。また、術後約1週間で仕事に復帰できます。
これまで日本で実施された子宮動脈塞栓術では、深刻な不正性器出血、過多月経、月経痛といった症状が80〜90%以上の方で改善されています。また、子宮筋腫の大きさも、3か月で50%、6か月で70%程度も縮小することが明らかになっています。
一方、副作用や合併症については、日本では現在まで重篤なものは報告されていません。海外の報告では、膿瘍形成や子宮内膜炎などの感染症の他に、術後に永久的な無月経や卵巣機能不全が1〜2%程度の確率で起こるとされています。さらに、術後に子宮全摘術が必要となる頻度は、0.2〜10%と報告されています。
将来の妊娠・出産を希望される方には、子宮動脈塞栓術は原則的にお勧めできません。これは、子宮動脈塞栓術の症例数がまだ少なく、子宮動脈を塞栓した後の妊娠する能力に与える影響などに関して、未解明な点が多いからです。しかし、現在世界では、子宮動脈塞栓術を行った後に20例以上の方が出産しているという報告があります。
子宮動脈塞栓術は、手技としては既に確立した術式といえますが、実施されてからの歴史がまだ浅く、長期的な効果や副作用、あるいは妊娠に与える影響など、今後解決すべき課題も少なくありません。

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